サブリース会社から、
「今後の借上賃料を10万円から8万円に変更したい」
と言われたら、オーナーとしては簡単には納得できないでしょう。
「家賃保証があると思って契約したのに、なぜ減額されるのか」
「8万円ではローンの返済が厳しくなる」
「この減額を拒否したらどうなるのか」
そんな疑問が出てくるはずです。
では、サブリース会社から提示された家賃の減額を拒否した場合、オーナーはどうなるのでしょうか。
結論からいうと、サブリース会社から減額を求められたからといって、オーナーがその金額を必ず受け入れなければならないわけではありません。
一方で、
「拒否すれば、今までの家賃を永久に維持できる」
という意味でもありません。
サブリースの家賃減額をめぐっては、契約内容だけでなく、借地借家法の規定も関係してきます。
サブリース会社に「減額します」と言われたら、そのまま従うしかない?
まず、ここは明確に分けて考える必要があります。
サブリース会社が、
「8万円に減額したい」
と申し入れることと、
「来月から8万円で確定する」
ことは同じではありません。
国土交通省も、サブリース業者から賃料減額を請求された場合について、オーナーが必ずその請求を受け入れなければならないわけではなく、変更前の賃料決定の事情などを総合的に考慮し、協議によって相当な賃料額を決めると説明しています。
つまり、
「減額を請求された=その金額を無条件で受け入れる」
ということではありません。
まずは、
- なぜ減額するのか
- いくらに減額するのか
- その金額の根拠は何なのか
- 契約書には何と書かれているのか
- 周辺の賃料相場はいくらなのか
を確認する必要があります。
では、減額を拒否すれば元の家賃が保証される?
ここで逆の誤解にも注意が必要です。
「サブリース会社の提示を拒否できる」
と聞くと、
「じゃあ、拒否して10万円のまま払ってもらえばいい」
と思うかもしれません。
しかし、そう単純でもありません。
借地借家法32条では、土地・建物に対する負担の増減、経済事情の変動、近隣同種の建物の賃料との比較などによって、現在の賃料が不相当となった場合に、賃料の増減額を請求できる仕組みがあります。
国土交通省も、マスターリース契約ではこの規定が適用され、賃料保証特約があったとしても、一定の要件を満たす場合にはサブリース業者による減額請求が否定されないと説明しています。
したがって、
「拒否できる」=「元の家賃が永久に保証される」
ではありません。
ここが、この問題を難しくしているところです。
減額の根拠を確認することが重要
では、減額を提示されたオーナーは何を確認すればいいのでしょうか。
まず確認したいのは、**「なぜ、その金額なのか」**です。
例えば、
「周辺相場が下がったので、10万円から8万円に下げたい」
と言われたとします。
この場合、
「周辺相場が下がった」
という説明だけで納得するのではなく、
本当に現在の周辺相場は8万円程度なのか?
を確認することが重要です。
同じ地域でも、
- 築年数
- 駅からの距離
- 間取り
- 広さ
- 設備
- 建物の状態
- 競合物件
によって賃料は変わります。
そのため、「近隣相場」という言葉だけで減額幅が妥当だと判断することはできません。
さらに確認したい「最初の家賃」
ここは、サブリースの家賃減額を考えるうえで非常に重要なポイントです。
例えば、契約当初の借上賃料が10万円だったとします。
数年後、
「周辺相場が下がったので8万円にします」
と提示された。
このとき、多くの人は、
「将来、相場が下がったから10万円から8万円になった」
と考えるでしょう。
しかし、投資家としてはもう一つ考えておきたいことがあります。
「そもそも、最初の10万円は何を根拠に決められたのか?」
という疑問です。
国土交通省が示している借地借家法32条に関する説明でも、賃料の増減を判断する際には、変更前の賃料額を決定する際に考慮された事情などを総合的に考慮することとされています。
つまり、減額問題を見るときには、
「今の家賃がいくらなのか」
だけでなく、
「その家賃は、そもそもどのような事情をもとに設定されたのか」
まで見る必要があります。
これは、サブリースを利用した投資物件を考えるうえで重要な視点です。
「保証家賃だから減額を拒否できる」と考えてはいけない
ここで、もう一度「家賃保証」という言葉について考えてみましょう。
仮に、
「月10万円を保証します」
と説明されていたとしても、契約や法律上、将来の賃料減額が問題になる可能性があります。
そのため、
「保証と言われたから絶対に10万円」
と考えるのも、
「サブリースだから業者の言い値で下げられる」
と考えるのも、どちらも正確ではありません。
実際には、
契約内容
↓
賃料改定の条件
↓
現在の市場環境
↓
変更前の賃料が設定された事情
↓
減額の根拠
などを総合的に見ることになります。
減額について話し合いがまとまらなかったら?
では、オーナーが、
「8万円への減額には納得できません」
と伝えたものの、サブリース会社も譲らなかった場合はどうなるのでしょうか。
まずは当事者間で協議することになります。
それでも合意できない場合、国土交通省は、ADR機関などの専門家への相談を案内しています。また、協議が調わない場合には、最終的に訴訟によって解決されることもあります。
つまり、
減額を拒否した瞬間にオーナーが負ける
という話でもなければ、
拒否していれば元の家賃がずっと維持される
という話でもありません。
賃料について争いが続けば、最終的には法的な判断が必要になる可能性があります。
「拒否するかどうか」より先に収支を計算する
ここで投資家として考えておきたいことがあります。
それは、
「8万円への減額を拒否できるか?」
だけではありません。
例えば、
- 借上賃料10万円 → 8万円
- ローン返済9万円
だったとします。
10万円なら、単純計算では月1万円残ります。
しかし8万円になれば、ローン返済だけで月1万円の赤字です。
ここに固定資産税や修繕費、管理費、保険料などが加われば、実際の赤字幅はさらに大きくなる可能性があります。
だからこそ、
「減額を拒否できるか」
を調べるだけでは不十分です。
本当に考えるべきなのは、
「この物件は、家賃が減額されても投資として成立するのか?」
ということです。
減額を拒否する前に確認したいこと
実際に減額を提示された場合は、感情的に「絶対に拒否する」と決める前に、次の点を整理してみましょう。
1.契約書を確認する
賃料改定について、どのような条件が定められているのか確認します。
2.減額の根拠を確認する
「相場が下がった」という説明なら、どのようなデータを根拠としているのか確認します。
3.現在の市場賃料を調べる
同じ地域・同程度の物件と比較して、提示された減額後の賃料がどの程度なのかを確認します。
4.契約時の賃料設定も振り返る
現在の賃料だけを見るのではなく、なぜ契約当初その金額だったのかを確認します。
5.減額後の収支を計算する
家賃が1万円、2万円下がった場合に、ローン返済を含めて収支がどうなるのかを計算します。
6.契約解除などの条件を確認する
減額をめぐる交渉がこじれた場合に、解約や契約更新などについてどのような条件があるのか確認します。
金額が大きかったり、契約解除や訴訟などが関係したりする場合は、契約書を持って弁護士などの専門家に相談することも検討したほうがいいでしょう。
まとめ|減額を拒否できるかより「なぜその金額なのか」を確認する
サブリース会社から家賃の減額を提示されたからといって、オーナーが必ずその金額を受け入れなければならないわけではありません。
一方で、減額を拒否すれば、それまでの家賃が永久に保証されるわけでもありません。
重要なのは、
「なぜ、その金額まで下げる必要があるのか?」
を確認することです。
そして、もう一歩踏み込むなら、
「そもそも、契約当初の借上賃料はいくらで、なぜその金額に設定されたのか?」
まで確認する必要があります。
サブリースの家賃減額は、単純に「業者が家賃を下げたい」と言っているだけの問題ではありません。
契約内容、周辺相場、経済事情、契約当初の賃料設定など、複数の事情を確認する必要があります。
そして投資家にとって最も重要なのは、
「減額を拒否できるか?」
だけではなく、
「減額を受け入れたとしても、この投資は成立するのか?」
という視点です。
もし減額によってローン返済すら難しくなるのであれば、問題は「家賃をいくらにするか」だけではありません。
そもそもの投資計画が、その借上賃料に依存しすぎていなかったか。
そこまで振り返る必要があります。
サブリースの家賃減額について考えるときは、提示された金額だけを見るのではなく、その金額が決まるまでの経緯と、減額された後の投資全体の収支まで見ることが大切です。