大家さんの本来の意味は?
よくお部屋探しをしていて、『大家さん』という言葉を聞くと思います。不動産屋が使う大家さんというのは、実は本来の意味と少し異なるんですよね。
大家さんというのは本来、
その物件の所有者であり、家主のこと
を指します。つまり、昔で言うところの『○○荘』の大家さん、などのような使い方をしたときに想像できるのが大家さんです。
家主という言葉より、なんか温かみを感じるのは私だけでしょうか?でも、今と異なり大家さんというのは部屋を貸すという、入居者からしてみれば一つ上の存在だったのかもしれません。
不動産屋が使う『大家さん』
しかし、不動産屋が使う『大家さん』という言葉は、
- 所有者
- 貸主
- 管理会社
の3つの意味を含意しています。もう何だかわかりません。こうなると本来の意味を逸脱しているというか、違う意味になってしまっていますよね。これには、わけがあります。以下の2つを見てください。
- 物件を紹介している時点で貸主が誰か分からない。
- 大家さんという言葉で濁すことができる。
1番目は、まず通常は、所有者=貸主であるという図式が、最近は、所有者≠貸主になり、管理会社=貸主となることもあるのです。
なので、物件をいろいろ紹介している時点、さらに言えば仲介業者からすれば管理会社が契約書類を送ってくるまで明言できないことも多くなっています。(まあ、当然調べることもできます)
そんなこともあり、一番妥当で、仮に現状と異なっていても許容範囲内として、それらをひっくるめてどんな物件でも『大家さん』という言葉をチョイスしているのです。
2番目は、は管理会社に向けられるお客さんの視線と、大家さんに向けられるお客さんの視線はどちらかと言えば『大家さん』ほうがマイルドだからです。
大家さんじゃあ、しょうがないなあという、諦めてもらえる可能性が高いワード、それが『大家さん』なのです。
以下の例を見てみましょう。
お客さんと不動産屋の会話



こう不動産屋が答えた場合、たとえ、管理会社が貸主で入居審査をしても、仮に審査NGになったとしても、文句の言いようがありません。
大家さんは、少し離れたイメージがあるからです。お客さんの方も、曖昧に使用・認識しているので、不動産屋にとって便利な言い回しになんですね。
では次はどうでしょう。
大家さんという言葉は便利な言葉



この例の場合、貸主が不動産屋であっても、大家さんであっても、最終的に古いエアコンの交換の許可をもらうのは所有者である大家さんです。(故障すれば、貸主が修繕義務を負い、所有者が最終的に負担する流れ)
いずれにしましても、状況はどうであれ、『大家さん』という言葉には逆らえない、印籠のようなワードとしての役割があるんですね。
『大家さん』という不思議なイメージ
大家さんという言葉を聞いたら、これだけの意味を含意している可能性があることを覚えておいてください。でも大家さんに限らず、こういう言葉を探してみるのも面白いかもしれません。
不動産取引というのは、真正面から説明していたら、話が進まないどころか、問題がこじれてしまうことがあります。それだけ賃貸の契約というのは、多くの利害が絡んでいるのでこのようなどちらともとれる言葉は多用する傾向にあります。
不動産屋というのは、あまり断定的な表現はしない癖があります。状況が変わったり、全てを把握するのが難しいので無難なワードを選択せず、言い切らないのです。必ず逃げ道を作る、まるで、政治家や公務員のようです。
大家さんという言葉は、時代とともに明確に使用することがしづらい言葉になってきたということですね。上記の例の場合、今ではキチンと『貸主』という言葉を使ったほうがいいですね。